こんにちは。なおです。
今週の水曜から、CreemaやBASEを含む、多くのサイトが緊急メンテナンスで停止。
理由は、PHPで脆弱性が発覚したこと。
PHPは、プログラミング言語の1つで、Webサイトで広く使われています。ざっと世界の半分以上のサイトはPHP製です。
何か起こる前に、とりあえず閉鎖しておこうって予防策でしょうね。
それとは別に、ハッキングによる顧客情報流出もトレンドになっています。
はぁ...。イヤな時代になりましたね...。
ユーザーが、無知のまま無邪気にインターネットを使って良い時代ではなくなってしまったのかもしれません。
例えるなら、こういう感じでしょうか。
我々(主に30代以上)が子供の頃は、家の鍵なんていちいち閉めませんでしたよね。
- 家に誰かいたら、鍵は開けっぱ
- コンビニに行くくらいなら、かけるか迷う
こういうレベルです。
ところが、現代では、
- 鍵は常時ロック
- オートロックが安心
- 防犯カメラもつけておくか?
- セコムやアルソックも?
ですよ(誰がこんな世の中にしたんですかね)。
鍵開けっぱで泥棒に入られたら、不注意な家主に非があると見なされるでしょう。
インターネット上でも同じ。
パスワードの使い回しは当然アウト(みんなやってるでしょ?)。
気軽に住所やクレカ情報を入力するのは良くないか。年収や家族構成も入れない方が賢明かもしれません。そもそも、登録するサイトを選別する必要もあるかも。
一定のセキュリティ意識がないと、怖くて使えなくなりそうな。
個人的には、ちょっと憂鬱な気持ちになる週でした。
では、気を取り直して本編へ〜
もう、何もかもAIに勝てない?
シュンとする話をしたので、明るい話をしましょう。
というより、「希望のある話」ですね。
AIの進化、すさまじいです。知識量では勝負にならないし、文章も絵も、かなりの水準で仕上げてしまう。しかも一瞬で。
もはや「人間の仕事なんて、全部AIに奪われるんじゃないの?」と思ってしまうほど。
クリエーターにとっては、他人事ではありません。絵もデザインもAIが作れるようになった今、これからの10年、20年を考えると、不安になる方もいらっしゃるでしょう。
でも、ボクは、人間の創造性には大きな勝ち筋があると考えています。
意外なことに、その理由は人間の「欠点」にあります。
人間は、めちゃくちゃ思い込みが激しい。
これですよ。「思い込み」が、突拍子もない創作を生み出す原動力になっている。今日は、そんな話をします。
人間は、少ない経験から勝手に学ぶ
ちょっと昔のAIの話をしましょう。
2016年、世界トップクラスの棋士を破った「AlphaGo(アルファ碁)」です。
その学習規模はこうでした。
- 人間の棋譜、約16万局分
- そこから取り出した約3,000万手
- さらにAI同士で対局を繰り返した
最初の学習工程だけでも、GPUという高性能な計算装置を50基使って、約3週間。そのあともあります。何千万とか、何億とか、相当コストがかかったと聞いたことがあります。
世界一強くなるまでの数字ですが、そもそもまともに碁を打てるようになるまでにも、結構な量の学習が必要だったはずです。
つまり、AIは大量の学習データを必要とするわけです。
じゃあ、人間はどうでしょう?
「二度と同じ失敗をするな!」
と一度叱られただけで、次から行動を変えられたりしますよね。
実際、2015年の学術誌『Science』には、人間がたった1つの事例から新しい概念を学べる「One-shot Learning」の能力に注目した研究があります。
人間は、わずかな経験から、過去に身につけた知識も総動員して「こういう法則があるんだ」と学習してしまう。
ここだけは、人間の脳がAIに勝っているんですね。
ただ、厄介な副作用もあります。
少ない情報だけで、勝手に辻褄を合わせるんです。
一度失敗しただけで「自分には向いていない」と決めつけたり、偶然の出来事に因果関係を見いだしたり。
人間は、しょっちゅう思い込みで間違えるわけです。
妖怪も、間違った想像から生まれた
しかし、そんな人間の思い込みから生まれた傑作が、何と多いことか。
昔の人々は、雷や病気、夜の森から聞こえる奇妙な音を、今のように科学で説明できませんでした。
前科学時代において、説明できない超常現象につけるラベルが、
「神」
「精霊」
「妖怪」
だったわけです。
(一応言っとくと、あくまで無心論者の見解です。神様も、妖怪も、いないと証明されてはいませんから)
こうして、ゼウス、オーディン、スサノオ、龍、聖杯、天使、リヴァイアサンなどなど、数多の被造物が爆誕しました。今でも映画やマンガやゲームで猛威を振るっています。
科学的には間違っていても、そこから伝説、物語、絵画、彫刻が生まれ、長い年月をかけて文化になっていく。世界クリエイティブ遺産ですね。
思い込みから、素晴らしい作品が生まれてしまった。
面白い話だと思いません?
これが、AIにできますかね?
AIの「奇抜」と、人間の「突飛」は何が違うのか?
実は、AIにも奇抜な発想はできます。
それこそAlphaGoは、1万回に1回しか選ばないと見積もられた「37手目」を打って、世界を驚かせました。何百年も囲碁界が気づかなかった、定石を覆す一手です。
ポイントは、AlphaGoには、最初から「囲碁に勝つ」という正解があったこと。
人間なら思いつかない手でも、膨大なデータから「これが勝ちにつながる」と判断して選んだ。奇抜だけど、目的に照らせば「合理的」な一手だったんですね。
何年も見過ごされてきたソフトウェアのバグを、AIが見つけてしまうのと同じ発想ですね。
AIは、「合理性」さえ見出せれば、人間には思いもよらない発想ができるのです。
一方、クリエーターがやっていることは、少し違います。
そもそも「何に価値があるのか」が決まっていないところから始まるからです。
例えば、1954年の『ゴジラ』。水爆への恐怖を、巨大な怪獣という荒唐無稽な存在に重ねて表現する。ちょっと何言ってるかわからないです。
今の『ちいかわ』は何でしょうね?
誰かが事前に「これは大ヒット間違いなし!」と証明できたでしょうか?
できないでしょう。なんで流行っているのか、正味のところ誰もわからないのでは?
まだ正解のないところに、「これ面白いんじゃね!?」という価値を見いだす。それを形にした結果、世の中の人たちも価値に気づく。
これが、AIには難しい。
「既にある正解を探すこと」と、「正解があるかもわからないものに価値を見いだすこと」は別物なんですよ。
後者をやってのけるのが、人間の「思い込み」なんですね。
古代中華の人々は、大河川の氾濫を「龍」が暴れているからだと解釈しました。
で、龍ってどんな生き物?
そうだな。体は「蛇」で、角は「鹿」で、爪は「鷹」で...
空も飛べて、雨も降らせるんだぜ。
AIでも、思いつくことはできましょう。
しかし、この組み合わせに、「それ、何かかっちょ良いな!」と価値を見出せるのは、人間だけ。
よくわからんことを夢中で掘れてしまうのが、思い込みの激しいホモ・サピエンスの特殊能力なんですね。
逆に言えば、「絶対的な正解」「明確なゴール」「ルールによる勝ち負け」がある分野は、AIには勝てないでしょう。
人間の優位性
興味深い研究が2つあります。
2024年の『Science Advances』では、AIからアイデアをもらった人の短編小説は、作品ごとの評価が高まりました。でも、AIを利用した作品同士は、似通いやすくもなったのです。
さらに2025年12月の『Nature Human Behaviour』では、約9,200人の人間とAIのアイデアを比較。平均的な創造性でも人間がわずかに上回り、特に創造性の高い人間は、AIよりも突出した発想を示しました。
興味深い話です。
AIは、個々の作品の完成度を高める助けになる。でも、みんなが同じようにAIへ答えを求めたら、作品も似通ってしまう。
AIに正解を探してもらうのは大いに結構。
でも、自分の頭の中の変な思いつきまで、AIに採点させなくていいんです。させたところで、AIは価値を理解できません。
想像することくらい、自由でいい
- 「理由はわからないけど、この組み合わせが好き」
- 「誰も欲しいと言ってないけど、どうしても作りたい」
そういう感覚、ありませんかね?
マーケティングでは合理性が必要です。商品として売るなら、お客さんが価値を感じるか確かめなければなりません。
でも、それは作品を思いついた後の話。
まだ世の中にない作品なら、売れる実績がないのも当たり前です。
売れる根拠がないことと、想像する価値がないことは、まったく別の話。
今後10年、20年で、AIはもっと賢くなります。
だからこそ、自分の偏愛や思い込みまで、合理的な「正解」で塗りつぶさない方が良い。ある意味で、そこだけが人間に残された矜持ですから。
少なくとも、想像(&創造)することくらいは、自由であって良いはずです。
目に見える合理性の先に、人間の勝ち筋がある?
ふらっと小舟で漕ぎ出して、いつの間にか誰もいない海に出る。
振り返ったら、もう陸地は見えない。何と遠くまで来たことか...。
仰向けに寝転んで、空を見上げてみる。
「あっ」
ふと気づいたら、そこが新世界への入り口だった。
いつも正解ばかり探す人に、幸運は訪れない。陸地を離れて、モヤのかかった海の向こうへと漕ぎ出した先に、人間の勝ち筋がある。
そういう時代が来るんじゃないでしょうか。
少なくとも、「0」の段階は、合理性を出発点にしない方が良いでしょう。合理性が必要になるのは、もっと後の行程です。
最近、「これ作りたいけど、変かな?」と思って封印したアイデアがあれば、聞かせてください。そういう話、ボクは大好きですよ。